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29 2017

チェルノブイリ30年の教訓 環境について知る権利 原発被災国が示すべき理念に ロシア研究者・尾松亮

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170329モスクワ

環境について知る権利

「各人は良好な環境に対する権利、環境の状態に関する正確な情報を得る権利、環境法令違反により被った健康被害、財物被害の補償を受ける権利を有する」
1991年末のソビエト連邦解体後、ロシア連邦で93年に制定された憲法の42条である。これは環境権を定めた条文とされる。
「各人は良好な環境に対する権利」を有するというところまでは、どこの国でも考えつく理念だろう。
重要なのはそれ以降の部分。「環境の状態に関する正確な情報を得る権利」を明記していることだ。「良好な環境に対する権利」というだけでも憲法の理念としては十分ではないのか。なぜ「知る権利」とも呼べる要素を、同じ条文に盛り込むのか。
これはロシアが原発事故被災国であることと無関係ではない。チェルノブイリ原発事故後、ソ連政府は住民の命に関わる情報を隠し、それが被害の拡大を招いた。広い地域での汚染状況が一般に公表されたのは、事故から3年以上たってからだった。ないがしろにされた被災地域から、国家責任を問う声、より高度な自治・自決を求める声が高まった。それがソ連解体に向かう“土壌”をつくった。
「環境について包み隠さず話すこと」。新生ロシア連邦として出発するに当たり、国民に示すべき必須の理念であった。
「環境法令違反により被った健康被害、財物被害の補償を受ける権利を有する」の一文も、同様にチェルノブイリ被害者の苦い体験に立脚している。被害者の多くは、事故直後、何の補償もなく打ち捨てられた。91年にチェルノブイリ法が成立した後も、度重なる改悪や補償の削減に苦しめられてきた。


原発被災国が示すべき理念に

このロシア連邦憲法42条には、チェルノブイリ被害者団体「チェルノブイリ同盟」の立法提案が反映されたという。チェルノブイリ同盟は、原発事故収束作業員とその遺族を中心に設立された団体で、被害者の権利保護や立法提案に取り組んできた。
これは紙に書かれた美しい言葉ではない。チェルノブイリ法に定められた補償が削減されるたびに、被害者たちは憲法裁判所に対し、違憲立法審査を求めてきた。勝訴して改悪を阻止したケースもある。
日本でも、憲法に環境権を加えるという議論がある。「良好な環境に対する権利」というだけでよいのか。原発事故という甚大な「環境法令違反」を総括せず、この国の環境権を議論することはできない。

(聖教新聞2017年3月16(木)付 チェルノブイリ30年の教訓 環境について知る権利 原発被災国が示すべき理念に ロシア研究者・尾松亮)

ありがとうございます。
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