26 2017

チェルノブイリ30年の教訓 住居と移住の保証 選択を肯定して支える ロシア研究者・尾松亮

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住居と移住の保証 選択を肯定して支える

「放射性核種汚染地域に住居する市民は、放射線状況や被ばく量、被ばくにより発生しうる健康被害に関して与えられる客観的な情報に基づいて、自主的に当該地域での移住を続けるか、他の地域に移住するかを決定することができる」
これは、チェルノブイリ原発事故被災者の権利を定めたチェルノブイリ法第6条の規定だ。
原発事故により広大な地域が汚染された。原発周辺の30キロ圏内は強制避難対象となった。しかし30キロ圏外にも汚染は広がり、地域の汚染度はさまざまだ。
すべての地域から全住民を強制避難にはできない。でも30キロ圏を超えたら、まったく何もしないというわけにはいかない。
チェルノブイリ法は、汚染の度合い、住民が受けうる被ばくリスクの度合いに応じて、「段階的に移住を義務付ける地域」「移住するか住み続けるか選択できる地域」「移住の支援はないが、放射線防護や健康管理を行う地域」など、地域の位置づけを定めている。
この「移住するか住み続けるか選択できる地域」というのが要となる。
「危険だからみんな避難せよ」でも、「安全だから避難なんてとんでもない」というわけでもない。
「汚染がある以上、リスクはある。住み続けながら放射線防護策でリスクを低減するか、汚染されていない地域に移り住むか、どちらの選択も肯定する」という考え方だ。
チェルノブイリ法では「法的に保証された自主的退去」(移住権)という。

希望者は、引っ越し費用支給のほか、移住先で住居を与えられ、雇用面での支援も受けられる。
この制度について「プーチン政権下で住宅の費用はカットされた」「不公平な運用で賄賂に使われている」といった報道は後を絶たない。それでも、同様に「移住権」の制度を持つウクライナでは2005年までに約1万4000世帯が移住の希望を実現した。
事故から25年後の11年でも、ロシアの主要被災地ブリャンスク州では700人超の移住実績がある。
リスクを下げる取り組みをしながら「住み続ける」選択も同様に肯定される。
国が、法が、その選択を肯定している。選択権があることを知る人々は、互いの選択を批判しない。
日本でも原発事故後、避難指示区域の外から、汚染や被ばくのリスクを避けて移動した人々は多い。しかし、それらの人々の選択を肯定し、支える制度は決定的に足りない。
福島県からの避難者の一部に対して提供されてきた住宅支援が、2017年3月末で打ち切られる。

(2016年12月22(木)聖教新聞 チェルノブイリ30年の教訓 住居と移住の保証 選択を肯定して支える ロシア研究者 尾松亮)

本当にありがとうございます。
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