07 2017

子ども・被災者支援法の今後 福田健治

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170730国会議事堂

居住、避難の意思を尊重実施へ国が主導的役割を 福田健治

子ども・被災者支援法の今後について、日弁連東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部委員の福田健治氏の記事が聖教新聞に書かれていましたので掲載いたします。

制定から5年が経過

 福島第一原発事故後、政府が避難を指示した区域以外でも、少なくとも5万人以上の人たちが、原発事故のさらなる悪化や放射線による健康影響を懸念して避難しました。
 こうした区域外避難者(自主避難者)への支援立法として2012年6月に制定されたのが、原発事故子ども・被災者支援法(支援法)です。制定から5年が経った支援法は、果たして原発事故被災者のために役立っているでしょうか。
 支援法のポイントは次の4点です。
 第1に支援法は、議員立法として提案され、当時、野党であった自民党・公明党を含む全会一致で成立しました。
 第2に、同法は理念として、居住継続、避難および帰還の選択を被災者が自らの意思で行うことができるよう、いずれの選択も適切に支援するとしています。被災者の自己決定権を尊重すると同時に、単に自己責任と突き放すのではなく、各自が居住・避難をできるよう選択を行うための支援の必要性をも謳っている点に、その特色があります。
 第3に支援法は、居住者や避難者に対する支援のメニューを幅広く設けています。避難者への避難・住居・就業の支援、居住継続者への放射線量の低減や、いわゆる保養(線量の低い地域での体験活動)などについて、必要な施策を国が講じることとしています。
 さらに第4に、これら施策の計画や実施に当たって、被災者の意見を反映させるための措置を講じることを定め、法律実施における被災者の参加権を明示しています。

狭すぎる対象地域

 支援法の実施状況を見てみましょう。同法はプログラム法であり、支援策の概要しか書かれていません。具体的な支援策は、基本方針で定められることとされていました。
 基本方針の策定は1年以上放置され、13年8月には、被災者が基本方針の策定を求めて訴訟まで提起しました。最終的な基本方針の策定は、法律制定から1年4カ月を経た13年10月にまでずれ込みました。
 基本方針は、支援対象地域を福島県中通り・浜通りの市町村に限定してしまいました。この結果、宮城県南部や栃木県北部など、福島県と同様の汚染状況にある地域が支援法の支援対象から漏れてしまい、福島県外の被災者からは強い抗議の声が上がりました。
 福島県からの避難者には、これまで災害救助法に基づく応急仮設住宅として、借り上げ民間賃貸住宅や公営住宅などが無償で提供されてきましたが、区域外避難者への提供は本年3月で打ち切られてしまいました。
 これに代わる住宅支援として、福島県が今後の民間賃貸住宅の家賃について2年にわたり一部を補助しているほか、避難先における公営住宅への入居円滑化がなされています。
 後者は支援法によるもので、①福島県に住宅を保有していても避難先での公営住宅を可能とする、②収入要件の認定にあたって、世帯の一部が福島県内に残っている場合は、世帯収入を2分の1として取り扱うというものです。
 16年に入り、住宅の無償提供の打ち切りに伴い、いくつかの避難先自治体は、この施策に基づき、区域外避難者向けの公営住宅の専用枠を設け募集しました。
 例えば東京都は300戸の募集を行い、142世帯が都営住宅に入居しました。有償にはなりますが、比較的低廉な家賃で、安定的な住居の確保につながっています。
 他方、これら施策は自治体や避難先住居の種類によって、利用の可否が細かく異なっています。
 同じ東京都に避難した被災者でも、都営住宅や国家公務員宿舎に避難した方は、上記の都営住宅専用枠に申し込むことができた一方、雇用促進住宅などに避難した方は募集要件から外れてしまい、途方に暮れている人もいます。
 こうした専用枠が設けられていない自治体もあります。避難先による支援策の不平等は、早急な対策が必要です。

医療費の減免措置も

 支援法は、子どものときに一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住していた人に対し、生涯にわたる健康診断を実施すること、被災者の医療費について減免措置を取ることを国に求めています。
 残念ながら、これらの条文は今のところ全く無視されている状況です。
 国は、法律が定める「一定の基準」を定めず、健康診断の実施は福島県に委ね、県外の被災者は置き去りにされています。また、医療費の減免について、国は何の措置も取っていません。こうした状況は、明らかな法律違反です。
 支援法は、原発事故被災者に対する支援メニューを定めるだけであり、その実施は大きく政府の裁量に委ねられています。政府が実行に移らない以上、本来であれば、支援法の実施を担保すべく、さらなる立法措置を国会が行うべきです。
 特に、健康診断の実施は、福島県が行っている県民健康調査で190人が甲状腺がん(疑い含む)と診断される中、他県での実施が急務となっています。11年に公明党などがまとめた法案を元に、14年に子ども・被災者支援議員連盟が法案の骨子を作成しています。支援法のさらなる実施に向けて、国会の主導的役割が期待されています。
 (福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク共同代表)

 ふくだ・けんじ 1977年、神奈川県生まれ。弁護士、ニューヨーク州弁護士。日弁連東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部委員。著書に『避難する権利、それぞれの選択』『原発避難白書』(共著)などがある。

(聖教新聞2017年7月6(木)付 子ども・被災者支援法の今後 福田健治)

法の不平等を一刻も早く是正し、被災で苦しんでいる民衆のために政治家よいよいよ働きなさいと言わんばかりです。
公明党を始め、民衆のために戦う政治家の皆さん、どうぞよろしくお願いします!

ありがとうございます。
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