12 2020

ワイルドスワンを通して中国を想う

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200512万里の長城

ワイルドスワンを通して中国を想う

題名 ワイルドスワン
著者 ユン・チアン/土谷京子 訳
発行 講談社


この話は1900年から1980年にかけて、清朝時代(1644~1911)から現代中国までの話です。著者(ユン・チアン)の祖母から著者までの3世代の体験を通して、中国とはどのような国であったかを語る。
清朝が滅亡し、中華民国が成立した時代は、軍閥が混戦し、蒋介石(しょうかいせき)率いる国民党が中国の大部分を統一する。
その後日本が1932年「満州国」を成立。この波瀾の時代を祖母が生きた。

国民党は腐敗し、この国を革命し人民の社会を作るのだと毛沢東(もうたくとう)率いる共産党が立ちあがる。
このとき共産党員として著者の父母が活躍する。その後蒋介石は負け、台湾へ逃亡し、1949年、毛沢東が中華人民共和国が成立する。

その後、1959年に大飢饉、1966年~1976年にわたり文化大革命が行われる。
この波瀾の時代を著者とその父母が生き抜いた。

この時代の中国像を、著者と母の経験を通して、我々外国人が今まで知ることのできなかった本当の中国人の生活、民衆の苦しさ・恐怖を具体的に書いている本である。 しかし何と中国は宿業深き国であったのか。

人民のためと掲げながら結局中国共産党は独裁政治を行い、民衆を私物化してしまった。
そしてまた、国民党も、共産党も同じであった。中国人の神として崇められている毛沢東の真実の姿、著者の怒りが伝わってくる。
国民党も共産党も最初は国民のためにと立ち上がったはずだ。
しかし巨大になり権力を握ると腐敗が始まった。権力を拡大させるために、民衆を利用し始めたのだ。
人民のことを考えず理想のみを追い、自分を神に近づけたいという、本質は生命破壊の魔の生命ではなかろうか。

誰が何といおうと 一切の生命は平等であり、生命尊厳であるという生命哲学を見失ってはならない。
この哲理を土台にしない限り、これからの国家も文明もいずれ崩壊するであろう。

さて、この状況を打ち破ったのは、ふざけるなという怒りを爆発させた庶民だったのだ。
過去の遺産を破壊し尽くし、悪い人間が上になり、善人が迫害され殺されるという文化大革命を終了させたのは、民衆の怒りだったのだ。
そして、人民の為にと知恵を絞りながら戦った周恩来(しゅうおんらい)、鄧小平(とうしょうへい)も民衆の視点で描かれている。

私が強く思ったこと、それは信念を決して曲げなかった著者の父の生き方だ。
全人類が敵になったとしても、自分が正しいと言いきれるならば、最後まで貫き通せ!と言った戸田先生の言葉を思い出した。
この生き方を強く学んでいきたい。そして、沈黙は敗北なり、と強く感じた。

正義を声を大にして叫ばずに要領よく生きた人間と、迫害の人生を歩み、短命で亡くなった著者の父の生き方と、どちらが充実していたか。安らかに微笑むように亡くなった父は、人生の勝利者であったに違いない。

いつの時代も民衆の側に立つものが最後は勝利する。

ありがとうございます。
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