15 2021

韓国式発想法を学ぶ

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210714韓国

題名 韓国式発想法 P205
著者 舘野 皙(たての あきら) 生活人新書 NHK出版



韓国人の文化や生活、考え方

 韓国問題研究家の著者が韓国人の文化や生活、考え方についてまとめたものである。
自己主張は命なのが韓国人だ。韓国人の議論の進め方や主張は対立的で挑戦的なのに対し、日本人は自分の意見を切り出さずに相手の意見を探る、つまり調整的で微温的なのが日本人だ。日本人は到達点をあらかじめ考えながら議論するが、韓国人は自分なりの意見・主張をいかに展開するか、対立する相手をいかに言い負かすかにウエイトをかけてしまう傾向があるという。となると議論は平行線を辿り、結論が出るまで相当の時間をかける。私も韓国人と付き合う機会を頂いたが、筆者のいうとおり確かにその点を感じるが何故だろうか。

 筆者は次のように云う。韓国人は子供のころから自己主張するように育てられ、おのずから討論術にも長けている。主張内容・議論の組み立て方はともかく、相手の主張の弱みや欠点を探り当て、相手の主張を論破する技術においては断然勝っているようだ。日本人には「他社依存の甘え」が認められるとすれば、韓国人は議論においても絶えず自己主張をすることが生存の要件となっている。



韓国のビジネスの特徴

 またビジネスの特徴も挙げられている。日本人は就職してから自分が働きやすいように、与えられた環境を変えていく努力を惜しまない。しかし韓国人は意見を申し出て受け入れられないと判断すると、いさぎよく離職して次の仕事を探すようだ。この韓国人の決断の早さ、思い切りのよさはどこからくるのか。雇用・賃金体系が年功序列制や終身雇用制になっていないからかもしれない。機敏に立ち回る知恵と時間の勝負ととらえるのだ。そのために隙間産業、ベンチャー企業の発展の余地が残っているのが大きな利点かもしれない。もうひとつの韓国ビジネスの特徴は決断のスピードである。決断し行動に移るまでの時間が日本企業に比べるときわめて短い。これは、株式を公開して広く資金を集める体制になっていないオーナー企業であるからトップの決断は直ちに会社の方針となるもののようだ。これは私自身の経験を通しても感じる点であった。もちろんスピードが速ければ品質は低下するのが常であるが、オーナーが明確であるため無責任な体系とは無縁だ。たとえ間違えていても直ちに修正する姿勢がある。これからの時代を生き残るためには重要な資質かもしれない。

以上の筆者の紹介を通して、私は韓国文化の特徴として次のように考える。この本では韓国の歴史についてはあまり触れてはいないが、地理的要因から常に近隣諸国から脅かされ、侵略された苦汁の歴史と経験が、自国の歴史と文化を築き上げ固める以上に、その時の困難な状況・環境をどう乗り越えるかということに、韓国人の考え方・価値観のウエイトが占められていた文化であったのだと。従って韓国人は自然のうちに、筆者が云う、機微に立ち回る知恵と時間を勝負ととらえ、その時々の議論に打ち勝つ知恵と力を身につけざるを得なかったのではなかろうかと考える。
そのほか宗教についても記している。韓国人は日本人よりも確かな宗教意識を持っており、日本のように葬式宗教と揶揄されるのではなく、社会運動や文化運動において宗教団体の果たす役割は大きく、社会的にも発言の場が保証されている。特に旧正月と秋夕に故郷へ帰る人々の巨大な流れから、韓国人から自ら儒教者と主張はしないが、韓国人の心情や行動様式にはまぎれもなく儒教的なものが根付いていると分析している。



日本は朝鮮半島との歴史を学べ

 最後に筆者は今後の日韓双方の発展のために大事な点を指摘している。それは、日本側について云えば、未来志向の前に、まずきちんと真摯に日本と朝鮮半島との間の20世紀の歴史を学べということである。過去を知らずして正しい未来の関係を築けるはずはない。そしてもっと身のある付き合いを重ねていく為に、政治家、経済人、学者、行政機関だけではなく、一般市民同士の付き合い、人間同士の交流が更に必要になるのだと。

私にも韓国の友人がいるが、以前ビジネスでお付き合いのあった韓国人の方から色々お話を伺ったことがある。そのときに著者が云う歴史と文化を学ぶことで、日本と韓国の違いを嫌悪するのではなく理解することが重要であること感じた。

一番身近で遠かった国、韓国について両国民の発展成長のために、更に学んで行きたいと思う一書である。
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韓国舘野皙生活人新書

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